地域福祉計画について考える

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渡邉 敏文 (新潟医療福祉大学)

 地域政策を推し進めていく上で、地域福祉計画の重要性があまり認識されていないのではないかと常々、思っています。そこで、今回の「地域政策について一言」では、地域福祉計画について述べることとしました。内容は、地域福祉計画策定の現状、特徴、今後の課題、まとめ、の4点です。

1.地域福祉計画策定の現状
 厚生労働省の調査によれば、地域福祉計画の策定率は2016(平成28)年3月末現在、69.6%です。約10年前の2006(平成18)年9月末での策定率が22.9%でしたので、高くはなっていますが7割に満たない状況です。策定未定の市町村で最も多い理由は(厚生労働省調査、2015年)、「計画策定に係る人材や財源の確保が困難だから」で63.0%(複数回答)です。策定が義務づけられていないという理由より、人材や財源の確保が困難という理由が上回っています。市町村の人口規模別に策定率を見ると、5万人以上のところでは概ね9割を超えており、人口規模が大きい市町村ほど策定率が高くなっています。つまり、人口規模の小さい市町村において、計画策定に係る人材や財源の確保が困難という理由から策定が難しいという現状が見えてきます。

2.特徴
 地域福祉計画の特徴は、①個別法に依拠した各計画を地域という視点から横断的に繋いでいく横串をとおす計画、②各個別計画を総合的に推進していく総合性を持つ計画、③住民の参加を保障する計画、④策定・実施(推進)・評価等において公私協働を行っていく計画、⑤民間計画(地域福祉活動計画)、隣接計画(医療計画、母子保健計画など)と密接に関連性を持つ計画、⑥策定のプロセスを重視する計画、⑦縦構造(例えば、市全体の地域福祉計画→区の地域福祉計画→地区別(小圏域)の地域福祉計画)を持つ計画、などに整理できると思います。多様で重層的な性格を持ち、地域に密着した計画であることがわかります。

3.今後の課題
 これからの地域福祉計画の質・量の向上に向けて行っていかなければならないことは多くありますが、喫緊の課題を整理してみます。先ず、規模の小さい自治体への計画策定のための支援を行い、さらに計画の策定率を上げていくことが必要です。計画の実行段階では、地域住民(市民)を始めとし、ボランティア、NPOなど、地域にある社会資源を有機的に機能させ実行していくことが必要です。また、評価を行う際は、地域福祉計画を実施した側からの費用対効果や成果指標を数値目標化した評価だけではなく、質的に地域住民にとってどうだったのか地域住民側からの評価を行うことや、地域住民の直接評価を取り入れていくことが必要です。さらに、第二・三期と次のステップの地域福祉計画の質を上げていくために、見直し機能の強化を行うことが重要です。計画途中(中間年度など)の見直しや評価も確実に行い改善に結びつけることや、場合によっては、新たな事項を盛り込んでいくことも必要です。このほかにも、現在、全国的に進められている地域包括ケアシステムと連関した地域福祉計画の推進や、各市町村の地域性を持ちつつも近隣の市町村との地域福祉計画の繋がりを持つこと(広域市町村計画)なども、視野に入れていくことが必要なのではないかと考えます。

4.まとめ
 地域福祉計画の価値は、そこに住んでいる地域住民一人ひとりの生活の視点にいかに向けられているかではないかと考えています。地域づくりのための地域福祉計画ではありません。そこで生活をしている人を主体とした考え方・取り組みの基盤となる地域福祉計画が必要です。「地域住民が具体的な生活場面で、主体にもなり客体にもなる地域福祉計画をPDCAサイクルの流れの中で実現していくこと」が、地域政策についての一言のまとめです。

 最後に、今回、このような機会を与えていただき、皆様に感謝申し上げます。

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