地方の人口減少問題を考える

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坪井 明彦 (高崎経済大学)

国立社会保障・人口問題研究所が4月10日に発表した「日本の将来推計人口」によれば、1人の女性が生む数が今と変わらない場合、人口は2053年に1億人を割り、2065年には2015年比3割減の8808万人になるそうです。このように、日本全体の人口が減少している中で、地方の人口減少はより顕著です。なぜ、地方の人口が減少しているかというと、出生率の低下もありますが、地方から都市への人口移動が大きな要因です。その人口移動の中の大きな割合は、大学進学や就職を機会に生じています。

なぜ、都市部の大学への進学を望むのでしょうか。それは、高校生や受験生が都市部の有名な偏差値の高い大学に進学した方が、より良い就職先に就職できると漠然と考えているからではないでしょうか。医師や看護師、教師など将来の進路が明確な受験生は、必ずしも東京志向は強くないように感じます。一方で、将来の進路が明確でなく、漠然と将来は良い会社に就職したいと考えていて、偏差値の高い人ほど、東京志向が強いように感じます。

また、私の所属する大学は地方にありますが、7割ほどが県外から進学してきます。つまり、進学の時点では都市の大学を選んでいないのですが、就職の時点で東京の企業に就職する学生が3~4割に達します。彼らにその理由を聞くと、地元に良い就職先があれば地元に帰りたいけど、地元には自分が就職したいような会社がないので、東京の会社を対象に就職活動をするということです。

つまり、東京の大学に進学した方が、あるいは東京の会社に就職した方が、将来的によい暮らしができる、幸せになれると漠然と考えているのだと思います。しかし、東京での暮らしは本当に幸せにつながるのでしょうか。幸福度調査の都道府県別ランキングは主観的な指標か、客観的な指標かで大分違うようですが、東京での子育てのしにくさは、間違いないようです。「企業規模が大きい会社で働く従業員ほど子どもを持ちにくい」という調査結果もあります(「東京では1人しか産めない」『日経ビジネス』2015.03.09、p28~33)。本当は2~3人子どもが欲しいのに1人しか持てないということが、幸せな暮らしといえるかというと、少なくとも、この点は非常に疑問に思います。

しかしながら、多くの学生に共通する大企業で安定した仕事をしたいという価値観はそう簡単には変わらないでしょう。したがって、即効性のある政策は、大企業の本社機能(の一部)を地方に移転させることだと思います。コマツも、東京本社と石川地区の女性従業員の平均子供数に大きな差があったことから、一部の本社機能を石川地区に移転したそうです(「「脱東京モデル」コマツの挑戦」『日経ビジネス』2015.03.09、p40~43)。国や自治体もこうした政策を取り入れていますが、まだ効果は表れていないようです。

また、長期的には、地方に魅力的な仕事を作り出し、それを学生に伝えていくということも必要でしょう。多くの学生は、地方にどんな会社があるか、どんな仕事があるかを知らないまま、漠然と、東京の方が良い会社がある、良い仕事があると考えて、東京志向を強めています。この漠然とした東京志向を変えていくことが、地方の人口減少問題への対策として必要ではないでしょうか。

 

 

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