シンク・ローカル、アクト・グローバル~地域政策研究の意義について考える~

2015年9月1日

丸田 秋男(新潟医療福祉大学)

 新潟医療福祉大学は、2001年に開設された歴史の浅い大学ですが、「優れたQOLサポーターの育成」を目指し、地域を基盤にした教育・研究・実践を蓄積しています。特に、学生による地域貢献活動は活発で、大学が所在する新潟市北区(人口約78,000人)のすべての小・中学校(21校)及び高等学校(1校)に対する学習支援等(課外活動スポーツ支援を含む)に取り組んでおり、公民館の活動や地域のまちづくり、子どもの貧困対策等を含めると、活動人数は年間1,800~2,000人に上ります。また、教員等による地域と大学との連携は、健康づくり、介護予防、地域子育て応援、若者と連携した魅力ある商店街づくり、保安林を活用した新産業創出など多様な取組を展開しています。

本学の学長(公衆衛生学)との間で、このような多様な取組の「実践知」や「専門知」を、地方から全国やアジア諸国等にどのように発信するかについて議論したとき、「アクト・ローカル、シンク・グローバル」から「シンク・ローカル、アクト・グローバル」へ発想を転換することを示唆されました。

「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー」というスローガンは、1960年代にアメリカの環境学者ルネ・デュボス(1901~1982)が提唱したとされています。ルネ・デュボスの「地球規模で考え、地域で行動せよ」というスローガンは、現在もビジネス業界等で多用されていますが、その一方で、ローカルな発想でグローバルに展開する必要性も求められています。同志社大学の浜矩子教授は、「グローカルとは、ローカルな発想をもってグローバルに展開することだろう」(2004年)と述べています。また最近では、日能研の高木幹夫代表が2014年に日本で開催された「持続発展教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」に向けて、「シンク・ローカル、アクト・グローバル」という発想を求めています。

私は、地域政策研究の意義は、現代社会が抱える様々な地域課題をメッシュを小さくして捉え、身近な地域における取組等の評価を通じて、課題解決の方法とプロセスを明確化することにあると考えています。

人口減少時代に求められる地域政策へのアプローチにおいても、地域課題を捉えるメッシュを小さくし、市民が身近な問題を自分のこととして考え、主体的に課題解決のプロセスに参加し行動できる仕組みを可視化する役割が求められているのではないでしょうか。このような観点から、「シンク・ローカル、アクト・グローバル」という発想をもって地域政策研究に取り組むことに、あらためて大きな意義を見出しています。

2015年9月1日

Copyright© 日本地域政策学会 , 2024 AllRights Reserved Powered by micata2.