求められる地域司法の充実

2015年11月2日

大河原 眞美(高崎経済大学)

 地域の住民の抱えるトラブルに、消費者問題、労働災害、高齢者・障害者の事件など法的なものが多い。住民の円滑な生活を支援するために、地域に根ざした法曹の人的・物的施設の拡充が必要なのは言うまでもない。

法曹を考えると、全国には地方裁判所と家庭裁判所の本庁が50ヶ所と支部が203ヵ所置かれており、同数の検察庁もある。数の上から見ると十分のように見える。しかし、支部でもともと取り扱えない事件もあり、また、裁判官や検察官が常駐しない支部もある。このようななか、支部での事件数が少ないことを理由に支部の統廃合が行われた。

一方、日本の司法では、本人訴訟の占める割合が高い。司法制度改革により弁護士数が増加した現在でも、地裁民事事件の約2割、簡裁事件では6割が、原告・被告に弁護士(簡裁事件では司法書士も含む)のつかない事件である。

裁判官や検察官と違って異動がない弁護士は、本来、地域住民の司法へのアクセスの受け皿となるべき存在である。しかし、住民の多くは、どこにどのような弁護士がいるのかわからない。実際に、弁護士の66%は三大都市圏や大都市に集中しており、弁護士が全くいないかいても一人という「弁護士ゼロワン地域」もある。自分の住んでいる地域に弁護士がいても、法律事務所の敷居は高く、また、費用面においても不安がある。

このように、日本では、もめごとやトラブルの解決手段として、司法は十分に機能しておらず、地域住民の司法へのアクセスにはさまざまな障害がある。裁判官や検察官の増員のような国からの政策もあるが、その地域固有の司法を地域の住民に身近で利用しやすいものにするための地域からの政策もある。地域政策の研究者や実務家が、その敷居の低さと知見を生かして司法の実情を調査し地域住民のニーズに対応できる司法の在り方について、地域の弁護士会に提案することも考えられる。地域司法を充実させるためには、法曹界だけでなく、地域政策の研究者や実務家が住民を中心とする多様な主体を巻き込んで取り組んでいくことが求められている。

2015年11月2日

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