全国研究大会企画 地域と大学の連携による地域政策へのアプローチ

2016年7月1日

白石 克孝(龍谷大学)

 関西大学で開かれる第15回全国研究【大阪】大会におきまして、近畿支部主催企画として、地域大学連携分科会「地域と大学の連携による地域政策へのアプローチ」を企画しています。このテーマを選んだ背景について一言述べたいと思います。

 文部科学省のCOCプラス、総務省の域学連携、内閣府の地方創生カレッジなど、いわゆる地方創生において、組織・機関としての大学の取組、地域と大学の連携を通じた諸政策が位置づけられるようになりました。当然ながら、地方自治体や地域社会の側からも、地域に根ざした地域課題解決のあり方に大学(学生を含む)が関与する政策アプローチに期待が寄せられています。

 こうした一連の状況が意味するものは何でしょうか。地方自治体と地域社会にとっては、新しい政策推進主体と政策立案実施のアプローチの登場です。大学にとっては、教育と研究に続く大学の第三の使命としての社会貢献・社会連携の定着です。学習者(含学生)にとっては、地域関与を目指すアクティブラーニング型の教育機会の本格的導入です。つまり、三者それぞれの立場において、新たな挑戦と可能性が期待されるわけです。

 地方創生に呼応して作られた各自治体の地域創生プランを見ると、ほとんどの自治体において、大都市圏からの若者のIターンやUターンの促進が重要な政策として掲げられています。これらの政策に見られる最大の欠点のひとつは、生産年齢人口の世代、とりわけ若者に地方に移住してもらうことへの関心が、人口減少問題の解決のための施策として考えられていることです。

 このような若者への期待は、様々な課題を抱えた地方を再生するため、「人口としての若者」を地方社会に移住してもらうことにあるということができます。政策遂行者の指標は、若者の満足を実現することや若者のライフスタイルを変えることではなく、雇用数であり移住者数になっているのです。「人口としての若者」を都会から引きはがして地方に張り付けようとする議論は、「人間としての若者」を地方社会に惹きつけることができるのかという視点をどれほど持っているでしょうか。

 大学の第三の使命としての社会貢献・社会連携大学を大学が果たそうとするのならば、大学は地域社会と若者とのこうした根本的なミスマッチをただす役割を果たさなくてはなりません。アクティブラーニングを普及させることは、学生と地域社会との出会いの場を、相互の認識のすりあわせの機会を増やすことに他なりません。こうした観点からすれば、地域大学連携を地域政策の現代的な課題として論じることが求められていると思います。近畿支部の企画がそのための議論の場となることを願っています。

2016年7月1日

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