コロナ後の地域活性を考えるにあたって

2020年5月1日

青木 孝弘 (会津大学短期大学部)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威が全世界を席巻している。政府は4月7日に緊急事態宣言を7都府県に発し、4月17日には対象地域を全国に広げ、感染症の拡大抑制に奮闘している。まずは感染リスクを負いながらも懸命に治療を提供している医療関係者にこの場を借りて感謝申し上げたい。また教育に携わる者として、休校措置により通常の学習や部活動等の機会を失い自宅での抑制的な生活を余儀なくされる中、静かにこの禍の収束を願う青少年にも心から敬意を表したい。
 さてCOVID-19による世界規模での企業や社会活動の自粛は、経済に深刻な影響を与えており、リーマン・ショックや東日本大震災時以上のダメージが予見されている。地方に目を向けると、近年インバウンドを中心に観光交流による地域振興の効果が現れ始めていただけに、人の往来の急ブレーキの影響は計り知れない。一刻も早く収束し経済が回復することを願うばかりであるが、コロナ後の地域を考えるとき、楽観的な将来像が描けない実情がある。

 例えば筆者が活動する山形県では、県都山形市で創業135年を誇る老舗漬物店A社が今年5月末で自主廃業を決めた。近年の販売減少にCOVID-19による観光客の激減が追い打ちをかけた。A社は、山形市が国内で初めて認定を受けたユネスコ創造都市ネットワーク(映画分野)加盟に尽力し、その歴史的な社屋や蔵は山形国際ドキュメンタリー映画祭やまち歩きの拠点として親しまれてきた。それらも取り壊される見通しである。
 またジャスダック上場の洋菓子メーカーB社は、昨年1月に経営破綻して首都圏企業に事業譲渡された。B社は上場時に社会貢献の一環として複合文化施設をつくり、山形県出身の井上ひさしの蔵書図書館や劇場として芸術文芸の拠点となってきた。しかし後継企業からは施設への財政支援を断わられ、継続が難しい状況に追い込まれた。
 さらに創業300年を超える老舗デパートC社は、山形市長自らが「買って支えて」と市民に購買を訴えたものの実を結ばず今年1月に破産し、山形県は全国で唯一「百貨店がない」都道府県になった。花笠まつりの舞台となる中心市街地の賑わいづくりに長年大きな役割を果たしてきただけに、県民の喪失感は大きい。
 これら地域経済をけん引し、まちづくり等の社会貢献に積極的に取組んできた中堅企業の相次ぐ退場は、本格的な人口減少や高齢社会の到来によって地方が弱体化していることの現れであり、その状況で見舞われたCOVID-19による歴史的災禍からの回復は決して容易ではない。国も地方自治体も緊急コロナ対策により財政はますます逼迫し、従来の水準で公共サービスを提供することはもはや期待できない。ではコロナ後の地域活性に何か希望の道はないのだろうか。

 あまり知られてはいないが、休眠預金を活用して、子どもや若者の支援、過疎地域活性化、災害支援等の解決を図る休眠預金活用法が2016年12月に成立した。昨年11月には第一弾として24事業約30億円の助成が決定し、今春から本格運用が開始されている。単年度ではなく3年計画でも事業が実施できる点、助成金額が大きい点、NPO等の事業主体がチームを組み包括的な協働・連携体制での事業が推進される点、社会的インパクト評価の導入により事業の質の向上と革新が重視されている点などに特徴がある。さらに近年はクラウド・ファンディングを活用した民間ベースでの直接的な資金支援や、ふるさと納税も定着してきており、今後、まちづくり分野へのソーシャル・インパクト・ボンドの活用も推進されている。
 コロナ後の地域活性を考えるとき、大きな政府(自治体主導型)は財政面で実現困難であり、反対に小さな政府(民間主導)といっても担い手となる地域企業、NPO、金融機関は先細っており個別の取組みには限界がある。これから求められるのは、持続可能な地域をONE TEAMとして創りあげる努力であり、休眠預金の活用等に見られるように、行政には様々な民間の主体が連携して伸び伸びと活躍できる場と仕組みの創造に期待したい。

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