コロナ禍で進んだオンラインによる参加の経験

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白石 克孝 (龍谷大学)

 現在もなお、COVID-19によるパンデミックは、おさまる気配を見せていない。コロナ禍において、地方自治体のみならず、さまざまな主体の地域政策の遂行に大きなブレーキがかけられた。

 私自身もいくつかの自治体の審議会等の会長・委員長をつとめ、総合計画や環境基本計画等の策定について首長からの諮問を受けて、策定に取り掛かっていたところのコロナ禍であった。審議会等そのものが開催できない、策定に必要な市民参加プロセスが当初予定通りに実施できないといった事態が発生した。

 結局、延期を含んだ結論を出した自治体も、策定プロセスを一部変更して策定を進めた自治体もあった。その時間差を生んだのは、会議アプリの活用を自治体として早期に可能にできたかであり、共通していたのは、オンラインによる市民参加を進めざるを得なかったことである。

 会議を再開してすぐに気がついたことは、オンライン会議への適応が思っていた以上に早かったことであった。もちろん、新規の会議メンバーとのコミュニケーションなど、オンラインでなくては達成し得ないこともあることは言うまでもない。しかしながら、少なくとも審議会等の運営においては、会議アプリの導入支援をすれば、ほぼほぼ支障のない運営が早期に再開できた。不得手な人は、役所の会議室で手助けをしてもらってオンライン参加すれば、会議開催へ一気に進むことができた。

 しばらくして気がついたことは、市民参加が容易になる側面が生まれたことであった。大学で学外団体と共催して企画を催した際に、例年より参加者が増え、しかも日本各地からの参加者があったことに、主催側としては予想以上の喜びを得た。自治体審議の過程で市民参加の企画をオンライン開催にした際にも、これと同じことが小規模ではあるが起きた。同じ市町といっても交通の便が悪い自治体も多く、自家用車での移動、費用をかけての公共交通移動が、参加の障壁になっていた層が、オンライン企画ならと参加してくれたことが判明した。

 そして最近になって気がついたことは、結局市民参加に対して積極的な事務局であれば、あれこれと工夫をしてオンライン企画、オンライン併用企画を考え出したし、市民参加に対する意識が弱い事務局(オンラインスキルが低いと自ら感じている事務局であるかもしれない)であれば、オンラインでは参加できない人がいることを理由に対面企画にこだわったということであった。

 オンラインで参加できないひとへの配慮をどうするかという課題は、オンラインスキルを習得してもらうことも含めて、今後の大きな課題になることは間違いない。しかし同時に、ここで垣間見えた、参加のすそ野を広げる、参加を易化する可能性について、しっかりととらえなくてはならないと思う。政策立案プロセスや市民参加企画の開催において、大きな変化が生まれつつあることを感じている。

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