人と人とのつながりそのものが「地域資源」

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池田 幸應 (金沢星稜大学)

 2015年10月にスポーツ庁が設置され、スポーツツーリズムの大きな施策として日本各地、特に地方の豊富な自然環境下での地域特性を活かした景観・環境・文化に親しみながら体験するアウトドアツーリズムが推進されています。

 私は、地方(金沢市)で生まれ育ち、大学、大学院において「教育学」を専攻し、現在の金沢星稜大学に赴任しました。本学は「誠実にして地域に役立つ人間の育成」を建学の精神として掲げ、地域に根差した人材育成をめざしてきました。私自身も常に学生たちと近い距離で授業、課外活動、そして研究、地域活動に取り組んできました。スポーツ科学、野外教育学関連科目を中心に担当しており、里山里海環境に恵まれた石川県、特に奥能登地域での継続的な青少年の自然体験活動を実践してきました。自然が豊かな里山里海地域の多くは、過疎高齢化が急進し、コミュニティの継続自体が困難な状況であり、この社会状況の変化や地域の多様な課題解決に対応した大学改革や文部科学省COC、COC+事業、総務省「域学連携」関連事業等も実施され、これと同期して全国の大学等においても、地域連携センター等の地域との継続的な協働体制が創設、強化されてきました。私自身もこれらの事業に参画し、これまで以上に「地域」を意識しながら課題解決し即した教育、研究推進の必要性を実感し、地域貢献への思いを深めてきました。

 現在、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が進行している中、COVID-19の蔓延の終焉が見えず、感染拡大対策上、地域外への人の流れが抑制されている現状です。この影響を受け、奥能登地域で長年継続実施されてきた「祭り」の多くが、今年初めて中止となりました。石川県では、大学コンソーシアム石川に加え、過疎高齢化が急進する奥能登2市2町の課題解決に焦点を絞って能登キャンパス構想推進協議会が組織されており、その事業の1つ「能登・祭りの環」インターンシップ事業として、2011年度~昨年度まで県内複数大学の延べ979名の学生たちが祭りに参画しています。本年度は地域と学生(大学)との交流・協働の絆を継続するため、少人数学生による「祭りを中心に奥能登の魅力を伝えるムービーを制作!」として事業内容を変更し、地域-学生(大学)との相互信頼により、学生の視点から地域の魅力を発信する取り組みとなっています。

 多くの大学では依然として遠隔授業が併用実施され、特に本年度入学の1年生は家族、友人、教職員をはじめ、「人」との対面が極端に限定されている状況です。今後、社会全体のSNS等主流の人とのコミュニケーション状況がより一層急進する中、これらを活用しながらも、単に知識や情報のみを伝達するのではなく、人々の「心」を伝え、共感、相互理解し、それを形にして行くことが地域創生にとって不可欠だと思います。人と人とのつながりそのものが「地域資源」であり、連携・協働の基盤として最も大切にすべきことだと思います。

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