令和元年台風第15号、第19号及び10月25日の豪雨災害からの教訓

2019年12月2日

佐藤 英人 (高崎経済大学)

 2019年9月9日(月)の早朝、台風第15号は955hPaという近年まれにみる勢力で房総半島に上陸し、その直撃を受けた南房総市や鋸南町などでは、送電塔が基礎部分から根こそぎ倒壊する甚大な被害を出した。その傷が未だ癒えぬ翌月12日(土)には、同等の勢力を保つ台風第19号が襲来し、復旧・復興作業をあざ笑うがごとく強烈な暴風雨が再び被災地を襲った。さらに不運は続く。同月25日(金)には、台風第21号の影響による大雨が、関東・甲信越から東北地方に至る広範囲に河川氾濫や土砂災害をもたらす事態となった。内閣府防災情報の発表によれば、2019年11月7日現在、被害は死者95名、行方不明者5名、負傷者472名、全壊家屋1,817棟、床上浸水33,283棟に上っている。

 筆者の実家は千葉県市原市にあり、連日報道されたゴルフ練習場の倒壊現場から、自家用車で15分ほどの場所に位置する。実家では勝手口の窓ガラスが割れたほか、丸2日間、停電の憂いをみた。この停電で特徴的だったのは、同じ市内でも道を挟んで向かい側は通電しているのに、その手前では1週間以上も停電するという、被害の程度に地域差があったことである。東京電力が公表する復旧の見通しは見積もりが甘く、被災直後は「数時間程度の停電で済むのでは?」との楽観的な見方が広がっていた。ところが、全面復旧には被災から数週間もの時間を要する結果となった。当時は季節外れの暑さも手伝って、クーラーが使用できない室内で、大勢の高齢者が体調を崩していた。

 苛立ちを隠しきれない中にあって、千葉県のFMラジオ局Bay FMでは、被災直後から独自取材やリスナーから寄せられた情報を基に、最新の災害避難情報を積極的に発信していた。県の対応が後手に回るのとは裏腹に、停電でテレビやインターネットが利用できない環境下では、ラジオが大切な情報媒体のひとつであることを改めて痛感した。
 
 近年、未曽有の自然災害が頻発している。学会員各位におかれては、今一度、「自助」の備えをお願いしたい。具体的には1週間分の水と食糧を自宅や職場に備蓄しておくことである。特に水の確保は重要である。給水所から水を運ぶ作業には過大な労苦を伴う。
 
 加えて、身の回りの地形的リスクを熟知しておくことである。ハザードマップを読み込むことはもちろん、予め過去の土地利用や土地条件を理解しておけば、その土地が地形的に軟弱地盤なのか浸水域なのか、避難を判断する際の材料となる。自治体や国による避難指示を待つのではなく、自らの判断で適切、かつ迅速に行動することが、自身と家族の命をつなぐことになろう。過去の土地利用や土地条件は「地理院地図」や「今昔マップon the web」のサイト(Web GIS)で簡単に閲覧できる。この機会にぜひ確認されたい。

 最後にこのたびの災害で被害に遭われた皆様方に心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早い復旧・復興を祈念する次第である。

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