地域と学校の連携・協働による地域活性化に向けて    

2019年6月3日

益川 浩一 (岐阜大学)  

1.地域と学校の連携・協働が求められる背景
人口減少や少子高齢化、グローバル化等の進展に伴い社会環境が大きく変化する中、地域では人びとのつながり・支え合いの希薄化、家庭の孤立化、教育力の低下などが進んでいる。その一方で、いじめや不登校、子どもの貧困、教員の多忙化など学校が抱える課題は複雑・多様化してきている。これらの課題解決に向けて、地域と学校がパートナーとして連携・協働することが必要であり、組織的・継続的な仕組みの構築が求められている。

2015年12月の中央教育審議会答申では、地域を創生する「地域学校協働活動(以下、「協働活動」と呼ぶ)」を推進すること、新たな連携体制として「地域学校協働本部(以下、「協働本部」と呼ぶ)」の整備が提言された。また、2016年1月に策定された「『次世代の学校・地域』創生プラン」に基づき、地域においては、将来の地域を担う人材の育成や、子どもを核とした地域づくりの実践、学び合いを通じた地域のつながり・絆の強化や地域活性化などが目指され、学校においては「社会に開かれた教育課程」の実現や、学校の指導体制の充実、「地域とともにある学校」への転換を目指して、地域と学校とが一体となった総合的な施策が推進されている。さらに、2017年3月に「社会教育法」が改正され、協働活動が円滑かつ効果的に展開できるよう、①県及び市町村教育委員会が地域住民等と学校との連携協力体制の整備(協働本部)や普及啓発活動などを行うこと、②教育委員会は地域住民等と学校との情報共有や助言等を行う「地域学校協働活動推進員(以下、「推進員」と呼ぶ)」を委嘱できるとの規定が整備されている。

 

2.地域と学校の連携・協働に向けた新たな支援体制づくり
学校と地域・家庭の協働や「地域とともにある学校」づくりの人材育成・研究機能を持つ岐阜大学(地域協学センター)と、県内全域にわたり地域と学校との連携協力体制を促進する岐阜県(環境生活部)では、全国初となる人材育成から調査研究、普及啓発までの協働活動に関する総合的な支援機関として、2019年4月に「ぎふ地域学校協働活動センター(以下、「活動センター」と呼ぶ)」を共同設置し、県内各地での協働活動の普及促進を目指すこととした。

活動センターでは、地域と学校が連携・協働する仕組みづくりを促進し、子どもたちの育ちを支えるとともに、地域住民のリカレント教育・自己実現につなげ、協働活動を通じて地域のつながり・絆を強化し、地域の活性化を図ることを目的として、「人材の育成・確保」や「推進体制づくり」など協働活動の推進に向けた課題解決に向けて、多面的な連携事業を展開することとしている。

活動センターの事業内容は、①人材育成・確保、②調査研究、③普及啓発の3項目にわたる。とくに、「人材育成・確保機能」としては、市町村や社会教育関係団体と連携して、協働活動の中心的な役割を担う推進員を育成する研修を企画・実施することとしている。この研修では、推進員に関する知識や事業推進力の向上等を目指しており、今後推進員として委嘱予定者等を対象として、年間2回開催する予定であり、講義やフィールドワーク、レポート提出などを通じて修了認定を行うとともに、市町村から推進員への委嘱を通じて、現場で活躍できるようになることを想定している。

今後求められる地域と学校との関係づくりにおいて、これまでも地域で子どもの学びや成長を支える多様な協働活動が実践されてきたが、持続的・発展的な取組みへと構造転換していくためには、協働本部の設置や相互をつなぐ推進員の配置という組織的な運営体制が構築されるとともに、相互の役割や責任を明確化しながら、県内各地域において、創意工夫をこらして、特色・魅力のある協働活動が展開されていくことが期待される。

 

<参考>堀智考・益川浩一「地域と学校の連携・協働に向けた新たな支援体制づくり」岐阜大学地域協学センター『地域志向学研究』第3巻、pp.34-43、2019年。

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