【北海道支部からお便り】「地域政策学とは何か」~土台となる知識・情報の共有化について~

2016年5月1日

能登谷 聡(起業塾 能登屋)

 まずは本稿執筆にあたり、本年1月30日、北海道支部が新たに設立されたことをご報告するとともに、大宮会長並びに本部事務局役員の皆様、そして事務局員渡辺様にひと肩ならぬご高配をいただき、この場を借りて厚く感謝申し上げます。

 さて、1月の設立以降、小所帯ながら北海道支部の運営に携わってきましたが、その中で、新規会員向けに一定のメッセージの必要性を強く感じ始めています。
 それは何かと言いますと、新規入会者の皆様との対話を通じ、共有すべき基本的な知識や事柄が上手く伝わっていないと感じることがあり、それが原因となって、議論が噛み合いにくい状況がたびたび生じているためです。

 例えば、ある特定の分野に関わる地域政策ついて云々論じる場合、知識や情報について、一定程度の共有した土台がないと、論議の方向性すら一致しない場合も生じます。
 これはこれでやむからぬ側面もありますが、違うベクトル上で、個々人が言いたいことだけを言って、それで終わってしまう、というような極めて非生産的な場面が残念ながら生じています。
 ひょっとすると、他の支部においても、同様のことが生じているのではないかと推測しているところです。そして、こうしたことから、やはり共有すべき概念の習得や情報の共有化が必要だと感じるわけです。「灯台もと暗し」とはこういうことなのでしょう。

 そもそも本会に入会された会員は、学問的専門分野、実践経験、興味関心、視野や視点が、それこそ各人各様でバラエティに富んでいます。このバラエティさが、本会の魅力でもあります。
 そして、こうした多様性に富んだ構成員によって成り立つ集団は、視野や視点を広げて学べる絶好の場となります。個々人にとってみれば、知識を習得し学びを継続していく過程の中で、自己の意識を拡大させ、創造性を磨く機会とも成り得るわけです。

 しかし一方で、一見バラバラのように見える個々人を結び付け、組織的な集団として活動し、運営を維持していくためには、絶えず「結びつけ・結びつくには何が必要か」ということを強く意識せざるを得ません。

 こうした理由から、まず北海道支部では試みとして、「地域政策学概論」というべき内容の知識を情報発信していきたいと思っています。基礎的知識の普及はその後の展開に影響を及ぼします。地味で基本的なことですが、大切なことがらです。

 ちなみに、学問的ツールとして「地域政策学事典(高崎経済大学地域政策研究センター)」を使用します。この文献の選定理由は、体系的な内容となっており、初学者向けに適していると判断したためです。この文献を引用しながら、できるだけ簡潔な解説を試みたいと思っています。

 たとえば、最初に「地域政策学とは何か」という問題に直面します。このテーマは簡単そうで、実は相当に難しい内容になりますが、初学者にいきなり難しい論点を説明しても消化不良を起こしてしまいます。
 そこで、現時点で明確に言えることを、できる限り分かりやすく、誰でも理解しやすいような解説を心がけていきたいと思っています。入り口としては、便宜的あるいは方便であったとしても、誰もがイメージしやすくすることが重要ポイントだと思います。

 具体例のひとつとして、地域政策学の特徴を上げてみたいと思います。
 先の地域政策学事典の中で地域政策学の特徴が述べられていますが、それをさらに簡潔化してみると、地域政策学は「諸学問の総合化を試みた学問体系を有しており、応用科学的、かつ実践的で具体的学門である」と、その特徴を短く簡略化することができます。
 これならば、何となくであったとしても、大まかなイメージが湧くと思いますが、皆さんなら、いかが思われるでしょうか。

 これは私が言及するまでもないことですが、あえて触れるならば、たとえば、地域政策学について、その定義づけを巡っては各大学学部や大学院、極言すれば研究者単位で微妙に異なっており、唯一絶対というものがないことは、周知のとおりです。
 しかし、だからと言って、そのまま放置しておくこともできません。少なくと、学問的興味関心を持って入会されてきている方たちが多いのですから。私たち役員は、これらの方たちの期待に応えていかなければならないと思います。

 抽象的な言い回しだとしても、また荒っぽい表現だったとしても、このようなある程度の目安がなければ、議論が噛み合うはずもなく、会員の多様性を結合した創造的活動やその発展が難しくなります。少なくとも会員相互の緩やかな連携による創造力の発揮に支障を生じさせかねません。

 また、会員の中には、地域政策学=地域活性化という、違った概念を等式に置き換えたイメージを持ったり、あるいは地域政策学の領域を無自覚的に矮小化しているケースも散見されます。ぜひとも、地域における学会活動の基礎的諸条件のひとつとして、一定レベルの基礎的知識・情報の共有化を図っていきたいものです。

 将来的に共有すべき知識・情報が一定程度浸透してくれば、共通土台づくりもほぼ成功ということができます。しかし、これが現実化するためには、それなりの働きかけと時間がかかることでしょう。
ローマ一日にして成らず」のたとえどおり、地道な一歩を重ねていく以外に確かな方法は見出せません。
 今後は「土台づくり」を肝に据え、持続可能な運営に取り組んでいきたいと思います。

 今回は支部運営に関し、ひとつの私見を述べさせていただきました。
 また、各支部の皆さんのご意見をお聞きしたいと思っておりますので、アドバイスや何かご意見等がありましたら、ぜひ本部事務局までお便りをお願いいたします。

2016年5月1日

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