学 会 長 挨 拶

 

日本地域政策学会 第9期会長  小田切 徳美(明治大学教授)

 

2018年7月の岡山大会における理事会で本学会の第9期会長を拝命いたしました。本学会の運営や議論をリードされてきた、いままでの諸先生と比べて非力ではありますが、会員、理事、評議員の皆様のお力をお借りしながら、学会と地域の前進に務めたいと思います。何卒宜しくお願いいたします。

振り返ってみれば、本学会は、2002年に設立された若い学会です。しかし、それにもかかわらず、既に多くの成果を残しています。例えば、全国大会シンポテーマのテーマをランダムに拾い上げれば、第1回の「地域政策学の基本課題」(2002年)から始まり、「大学と地域が連携したまちづくり」(2006年)、「地域ブランドによる地域振興」(2007年)、「ポスト市町村合併と地域づくり」(2009年)、「地域主導の観光政策」(2010年) 、「人口減少時代の地域力創造と地域政策」(2015年)、「地方政策における地方紙の視野」(2018年)など、その時々の課題を現場の実態をベースに濃密かつ実証的に議論し、社会に問題提起しています。いずれも先駆的なものだったと言えます。

それは、おそらく本学会とその構成メンバーが、地域課題に対して、常に複眼的な視点を持っているために実現できた成果ではないでしょうか。あえて整理すれば、次のように指摘できそうです。

第1は、制度論、実態論、動態論の複眼的認識です。地方自治、地方財政などの「制度論」は地域問題を論じるときに避けることできない要素です。しかし、それは現在の地域がどのような状況にあるのかという実態論とその変化の方向性を示す動態論(運動論)を意識した議論でなければ、単なる技術的な説明に終わってしまいます。

また、第2は、それともかかわり、社会を形成するセクターを「公」「共」「私」とする複眼的認識です。以前の社会科学では「公的セクター」「私的セクター」の対立や調整が主要課題でありましたが、現在では、コミュニティやサードセクターを表現する「共」領域の認識は国内外問わず重視されています。この3つのセクターの並存と関連の認識なしには、地域問題は語れない時代になっています。

第3は、地域性にかかわる視点、つまり都市と農村の複眼的な視点です。本学会のように、都市問題の専門家も農村問題の専門家がバランス良く存在することにより、両者の相違点や共通点がはじめて浮かび上がってくるのでしょう。

以上の3点は、本学会の特徴であると同時に、いわばストロング・ポイントです。そして、それは、私たちの学会が看板に掲げる「政策」の理解に由来するのだろうと思います。ここで「政策」は制度のみを対象とするのではなく、むしろ「どうしたらよいのか」という問題解決の具体的指針を示す言葉だと考えられます。そのためには、先に掲げた、地域を見る3つの複眼的視点が必然化し、さらに、学問領域としても行政学、地理学、経済学、経営学、社会学、教育学等の異なる方法を総動員することが求められます。ひとことで言えば、地域問題の複眼的・総合的問題解決の場-これが本学会の本質だと思います。

これまで、こうした特徴を持つ会員の研究諸活動により、2018年の岡山大会で17回目の全国研究大会を開催し、機関誌『日本地域政策研究』は20冊の発刊を実現してきました。200名弱で始まった会員規模も現在約480名となり、順調な拡大を遂げております。

特に、最近の本学会では、支部活動の充実は目も見張るものがあります。すでにほとんどの地域で支部が組織され、多くの地域では全国大会とは別に支部の研究大会が開催され、地域固有の課題を、地元の住民や自治体職員とともに議論することが、当たり前に行われています。

とはいうものの、地域問題は日々変化し、新たな局面を作っています。国際比較研究を含めて、今後の本学会の課題も少なくありません。その際、著名な経済学者であるアルフレッド・マーシャルの“Cool Head & Warm Heart”という言葉をかみしめたいと思います。

地域問題を議論する時には、時には熱くなりすぎてしまうこともあります。他方では、「学会」という場は、逆にクール過ぎることもあります。そうではなく、私達は、地域の課題を“Cool Head & Warm Heart”に議論し、今後も発信して行くことが必要でしょう。

全国の地域政策や地域づくりに関心のある研究者、実務家、行政担当者、国や地方の議員など、多くの皆さんの参加を期待します。皆さんとともに、今日の地域政策課題を、複眼的な視覚から“Cool Head & Warm Heart”に議論し、問題解決に結びつけていくことを強く望んでいます。

2018年8月末日

 

投稿日:2016年11月8日

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