アフターコロナの地域福祉政策における可能性

2020年8月3日

青木 茂 (新潟医療福祉大学)

 連日メディアで取り上げられている、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界に蔓延し、多くの死者、入院患者を出している。それと同時に経済活動がほぼ停止状態に陥り、ソーシャルディスタンスの大号令により、社会的つながりが分断されてしまった。私は、社会福祉学の中でも地域福祉を研究する者として、この社会的つながりの分断には大きな危機感を抱き、一方で新たなる視点による地域福祉政策が求められると感じている。
 そこでわが国のコロナ禍における政府の対処方針を概観し、つながりの分断の影響と実践現場の創意・工夫から見えてくる地域福祉政策の可能性を述べてみたい。

 政府は、4月7日に大型連休の終了する5月6日まで東京や大阪など7都府県を対象に
特別措置法に基づく「緊急事態宣言」(以下、宣言と略す)を行った。その後さらに感染拡大が続き、4月16日には、宣言の対象地域を全国に拡大することを正式に決定し、全国民に対し、不要不急の帰省や旅行などを極力避けるよう促し、特に大型連休中の県外への移動については、法律に基づいて自粛を要請するとした。5月4日には、宣言の対象地域を全国としたまま、5月31日まで延長することを決定。具体的な行動目標として全都道府県で人との接触機会8割減の協力が呼びかけられた。その後段階的に宣言を解除し、5月25日に宣言を全面解除し、社会・経済活動の制限や自粛要請に関する「段階的緩和の目安」を公表した。「新しい生活様式」を定着させ、感染拡大予防のガイドラインを実践することを前提に、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げ、イベントの開催制限を7月10日に予定どおり緩和し、現在に至っている。しかし7月に入ってから首都圏を中心に感染拡大「第2波」を予感させるくらい感染者数が増加している。

 前記のとおり、わが国ではこれまで経験したことのない緊急事態に対して「自粛要請」という形で、良くも悪くも、「個人のモラル」「利他精神」に頼りながら乗り切ろうとしている特異な国であると言える。(一部には「同調圧力」がもっとも効果的であったという声も聴く。)このモラルと利他精神は、地域福祉を推進する上で重要な要素であり、元来「訪問」「出向」「対面」「伴走」「寄り添い」という表現を用いながら、至近距離からの支援が前提となっており、ディスタンスの発想はそもそもない。しかし、コロナ禍における実践現場では、「民生委員が要支援高齢者、障害者宅に訪問できない。」「高齢者の閉じこもりを予防するサロン活動が三密になるため開催できない。」「配食ボランティアがお弁当を配達できない。」などこれまで当たり前に行えた福祉活動が軒並み中止、自粛をせざるを得なくなった。しかし、そのような中でも「つながりを保とう」「孤立をさせないように」と、もっとも手軽な電話における安否確認から再開し、中には対象者宅に往復はがきを郵送して返信してもらう方法を行ったり、ボランティアのよる手づくりマスクの配布、フードバンクによる食材提供などが「新しい生活様式」「ソーシャルディスタンス」を意識しながら進められている。さらには「リモート飲み会」ならぬ「リモートサロン(遠隔サロン)」を試みた新たな事例もある(1)。こういった取組みは、アフターコロナの新たな社会資源として定着できる可能性が見えてきた。一方でこれは先駆的な取組みの一例であり、現在も一般的な地域福祉活動は元に戻ってはいない。

 アフターコロナの地域福祉政策は、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の普及促進がより一層必要であると考えられる。この分野は教育においても他国から見れば遅れをとっており、根本的な議論と設備投資に政府の英断が求められてくる。例えば防災行政無線の設備を地域社会全体に拡げたことで命と生活を守れるようになったことを評価し、アフターコロナでは、すべての世帯にタブレット端末等を配備するなどし、オンラインによる同時双方向のやり取りで社会的孤立の解消や求めている情報がリアルタイムで得られるメリットを重視し、普及を急ぐべきと考える。但しその前提には、メディアリテラシーなどの教育、指導とセットで進める必要があるのは言うまでもない。

参考
(1) 大阪府豊中市社会福祉協議会における取組み例

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