住民主体の地域政策の必要性について

2022年7月1日

渡邉 敏文 (新潟医療福祉大学)

 地域政策を進めていく上で、地域住民主体の考え方が理念上あったとしても、実際の場面で本当にそれがなされているのか疑問に思うことが、多々あります。このような問題意識から、「自治」「市政世論調査」「根拠に基づいた政策」をキーワードに、住民主体の地域政策の現状と課題を踏まえ、その必要性について、一言、述べます。

 自治は、①国の機関委任としての自治から、②地方分権における自治、そして、③住民との合意形成に基づく自治、さらに④住民主体の自治へと変化してきています。このような流れの中で、住民(市民)参加を保障する具体的なものの一つとして自治基本条例があります。NPO法人公共政策研究所が、2021年12月1日から2022年2月19日の間で調査したところによれば、402の自治体において自治基本条例が施行されています。これは、その時点での全国1788自治体の約22.5%にあたり、4分の1に満たない状況となっています。

 次に、市政世論調査(住民意識調査)に焦点をあててみます。この調査は、全国の政令指定都市では、ほぼ毎年実施されています。例えば、新潟市でも市政世論調査を毎年実施していますが、「新潟市として今後もっと力を入れてほしいものは」という質問項目を追ってみると、2021年度の調査では、第1位「まちなかの活性化」、第2位「公共交通の充実」、第3位「高齢者福祉」となっていますが、「高齢者福祉」については、9年間にわたり、上位3位の中に毎年、入っている項目になります。また、「まちなかの活性化」については、過去9年間で3位以内に入っている年が5回、「公共交通の充実」については8回入っています。これらの結果は、「区がより良くなるための課題」という調査項目とも符合しています。いずれも、短期間で行うことが難しい事業項目であることや、毎年の市民の注目度が高いことを意味しているなど、単純に結論づけることは難しいと思われますが、市民のための市政のあり方や成果が問われる場面でもあると考えています。言い換えれば、市政世論調査の結果を踏まえての根拠に基づく市民のための政策が行われているかを問う一側面ではないかと思います。

 地方分権の時代に入り、国、都道府県、市町村が役割分担を行い、政策を進めていくという時代に入って久しいですが、実際のさまざまな政策の中で、住民が主体となる政策はどこまで進んでいるのかその実態の解明や分析が必要です。また、地域住民に、住民主体の地域政策や自治に関心を向けてもらうことや、地域における福祉やコミュニティづくりに対する意識の高揚も必要になってきます。公的なサービスは画一的なものにならざるを得ない状況がある中で、数的に多いものが優先されることや効率性が優先され、個々のニーズとかけ離れたサービス提供になってしまう可能性を含んでいます。このような状況の中で、住民の満足度を高めていくための多様な考え方や取組が実際の場面で必要になってくるのではないかと思います。また、一人ひとりの住民のニーズの充足や課題解決が、政策から制度へ、さらに制度から具体的なサービスへと具現化され、住民主体の地域政策になっていくことを望みます。

 最後に、今回、このような機会を与えていただいた皆さまに感謝申し上げます。

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