先日の5月22日付け朝刊新聞各紙は、“高齢者人口がピークを迎える2040年の社会保障給付は、現在の1.57倍の190兆円に上る”という政府経済財政諮問会議の推計を一面記事で伝えていた。医療給付の伸びも大きく、現在の1.75倍の68.5兆円になると試算され、年金、介護同様、制度を持続させるためには、給付と負担の見直しが求められるとしている。医療費の増大が国の財政を圧迫して莫大な債務超過の主因となっているというのはこれまでもたびたび言われており、それはそれで異論があるわけではないが、その対策として給付や負担の見直しというだけで十分とは私にはとても思えず、制度や体制の抜本的な見直しが必要であると強く思うのだが・・・。
医療制度の問題は財政面だけではない。高齢者の多くは自らの最期を自宅で迎えたいと望んでいるし、政府も在宅ケアの比重を高めようと誘導している。しかし、大都市圏はともかく地方での在宅医療体制は全く不十分で、看取りを誰がどうするのかさえおぼつかないような状況だ。各都道府県は地域医療構想を公表しているが、残念ながら解決策に当たるような目新しい政策は見ることができない。
地域医療政策は、まず国が大枠の政策を提示し、各地域がそれに沿った政策を構築するというのが通常のパターンである。日本の医療の現状を考えれば、今は抜本的な政策転換が必要な時期に来ていると多くの関係者が感じている。国は思い切った新政策を打ち出すべきではないだろうか。
海外では、これまでに医療分野においても比較的大きな改革が何度も行われてきている。抜本的な計画や改革が実施されるとそれらは〇〇改革、〇〇プラン、〇〇モデルといった命名がなされさらに世に広まっていく。有名なところでは、アメリカのオバマケア、イギリスのブレア改革、フランスのジュペプラン、オランダのデッカープラン、ドイツのアグネスモデルなどなど。翻って国民皆保険以降の日本の医療界を考えてみると、これまで小さな改革は数多く実施されてきたものの、○○プラン、○○モデルなどと命名されるほど大々的に実施された計画・改革は皆無と言っていい。
医療における政策には、厚生労働省や中医協だけでなく、財務省、総務省といった政府機関や政府系諮問会議、協議会などがからみ、一方では強大な力を誇る日本医師会、日本病院会、日本看護協会、日本薬剤師会、与野党族議員、地方自治体など、多数の利害関係者の思惑が交錯する中で決定されるという複雑な事情があり、抜本的な政策ができづらいという事情があるのは理解できないわけではない。しかし経済政策ではアベノミクスや黒田バズーカ(マスコミ命名だが)といった名称のものが出てきている。そろそろ医療政策においても〇〇プランや○○モデルと言われるような政策の実現を期待したいところであるが・・・、それはやはりないものねだりなのだろうか。