「地域」のマネジメントを考えるために必要なこと

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内山 大史 (弘前大学)

私は地方大学で産学官連携を20年間マネジメントしてきました。これまでの活動を振り返りつつ、“地域を主体とした政策“について少し書かせていただこうと思います。

現在の職場に異動して以来、科学技術基本法、科学技術基本計画、国立大学法人化、知的財産戦略本部設置など産学官連携に係る制度や仕組みは大幅に変化した。最近では企業から大学あるいは研究開発法人への投資を10年間で3倍に増やすという目標が定められた。それを達成するための方策のひとつとして、例えば部局横断的な大型の共同研究を企画・マネジメントできる”産学連携機能本部“の強化を謳っている。またそれを効果的に推し進めるために、資金、知、人材の好循環のための処方箋が提言されたところである(「産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインについて」:2016年11月)。日本における企業と大学の共同研究の1件当たりの平均金額が海外のそれと比較して少額であることはデータで紹介されている。いわゆる”お付き合い型“と揶揄されてきた。それを解消するために、経団連から「産学官連携による共同研究の成果に向けて」が提言された(2016年2月)。それを受けてのガイドライン策定となった。大学も企業も”本気度“を試される。

一方、“地方創生”をめぐり、まち・ひと・しごと創生総合戦略における政策パッケージが動いている。その中には多くの事業が盛り込まれており、大学関係でも、「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」、「地(知)の拠点大学における地方創生推進事業」などをはじめ、多くの事業が進められているところである。この2つは大学単独で物事を進めるのではなく、地域の自治体等との共同での作業が肝となる。毎週のように打合せがあり、忙しい時は毎日のように情報の共有と決断が行われたりする。大学が地域の主体の一つであることを強く認識させられるとともに、実際に計画から実行までをマネジメントする主体でもある。2004年、国立大学法人化が行われた際に、それまでの「教育・研究」に加え、「地域への貢献」を責務として掲げた。また、機能別分化の議論の流れにより、「平成28年度国立大学法人運営費交付金における3つの重点支援枠について」において、“地域貢献型”を選択したのは55大学にのぼる。大学も自治体も“本気度”を試される。

さて、本気度を試されている大学の“資源”はご承知のように年々厳しさを増している。このような状況においてマネジメントを行うには、卓越した経営感覚が必要である。“企業“も”自治体”も“大学”も間違いなく“地域”の主体である。本気で戦略を考える体制整備を早期に実現する必要がある。

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