「多様性」について考える

投稿日:

熊澤 利和 (高崎経済大学)

 昨年(2018年)6月にAFP時事通信から、「性同一性障害、精神疾患から除外 WHOが分類見直し」の見出しでニュースが配信された。
 これまで、国際疾病分類(ICD:International Classification of Diseases)では、性同一性障害は、精神疾患として分類されていたが、それを「性の健康に関連する状態」に分類し、精神疾患から除外するということだ。2019年5月に開催される世界保健総会で採択されれば、国際疾病分類11として2022年1月1日から効力を発揮する予定だ。

 セクシャル・マイノリティーについて、ここ1,2年、”LGBT”というキーワードで取り上げられることは多いように感じている。しかし、セクシャル・マイノリティーの人々が、生活を営む上で、どのような問題を抱えやすいのか、理解しているのだろうか。例えば、教育環境や仕事について、医療、介護等の問題、貧困問題、スティグマや無理解に伴う差別といった諸問題についてなどどうだろうか。おそらく、セクシャル・マイノリティーに関する政策上の問題は、やっとその議論のテーブルについた段階だと思う。

 今の社会生活は、個人が生きていくことで精一杯で、他者に対する「想像力」を欠くことが多いのではないだろうか。「私」生活が、地域社会や共同体とどのような関係にあるのか、個人と社会との相互作用がどのように一人一人の幸せに繋がるのか、地域社会における問題を捉えていく上で、一つの方法として、ロバート・N・ベラーが述べていた”individualism”と“practice of commitment”から、個人と共同体について再考する必要があるのではないだろうか。それが、人口減少社会を迎えた日本において、市民として成熟度が進化し、多様性のある社会へと変わっていく手がかりになるのではないかと思う。

※なお、2013年、DSM第5版(DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)では、すでに、性同一性障害 (gender identity disorder) から、性別違和 (gender dysphoria) に変更されている。

Copyright© 日本地域政策学会 , 2024 AllRights Reserved Powered by micata2.