パートナーシップ型地域ガバナンスの本質

2018年7月2日

的場 信敬 (龍谷大学)

エネルギー政策を中核に据えた地域ガバナンスによる持続可能な地域社会の実現、という視点で研究を進めています。この4年ほど、仲間の研究者や実務家とともに、オーストリアやドイツなど欧州諸国を調査してきました。先進地域では、地方自治体、民間の中間支援組織、市民協同組合など、どのセクターを訪問しても、ごく自然に市民参画やパートナーシップによる取り組みが話題にのぼります。この「あたりまえ感」がどのように達成されるのか、なかなか明確な答えが見えない研究課題のひとつです。

そんな中、咋夏のオーストリア調査の際に、興味深い事例に出会いました。オーストリア国内のさまざまな地域づくりの現場において、1990年代初頭にパートナーシップの概念を強く意識して開発された「ローカル・アジェンダ21(LA21)」やEUの農村政策「LEADER」が、今も活発にかつ機能的に活用されています。例えば、首都ウィーンは、LA21プログラムを実践する100%官製のNPOを設立し、コア・コストも提供して継続的な活動を確保するしくみを整えています。しくみ自体は特に真新しいものではなく、地域で協議会やテーマ別ワーキング・グループを作って利害関係者がともに活動するオーソドックスなものですが、市民のニーズに応える200を超えるプロジェクトが実践されていました。その中で、産官民の参加者は、お互いの主張や価値観に触れ、将来ビジョンを共有しつつ地道に活動を行っていきます。それが学びのプロセスとなり、地域全体のキャパシティを高めていました。四半世紀前に開発されたLA21が、これだけの規模で現在もしっかりと地域政策の現場で機能していることは、かつてLA21を研究対象とした自分には嬉しい驚きでした。

ウィーン市の取り組みから改めて感じたことは、パートナーシップ型地域ガバナンスの本質は、ツールや制度の新規性もさることながら、むしろそれらを活用する「人材の質」にあるということです。先進地域では常に、パートナーシップ型の地域運営をブレることなく推進してきた政府セクターと、その想いに高い意識と責任をもって応えてきた市民の存在が見て取れます。そのような人材の育成がそのまま冒頭の「あたりまえ感」に繋がるかどうかは正直まだわかりませんが、政策学における「人」への注目の重要性を再確認できた調査でした。

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