地域を元気にするために必要なこと

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辻 利則  (宮崎公立大学)

私はもともと工学分野が専門で、地域政策分野に関することは素人ですが、現在の公立大学に所属し、学生と地域での情報技術の利活用を目指した活動を通して感じたことを書かせていただきます。

現在活動している地域は、私の所属する大学がある自治区(人口約2万人、高齢化率約23%)で、学校や病院、公共施設なども整った恵まれたところである。自治会の活動も活発で、民生委員と連携した取り組みも見られ、この地域で活動して7年になるが、それ以前より各人の信頼関係が築かれているようだ。

地域で活動する組織・団体はこれ以外に、自主防災組織、地区社会福祉協議会、民生委員をサポートする福祉協力員、地域包括センター、消防団、子供会や老人会などの地域協議会、そして自治区全体の事業に取り組む地域まちづくり推進委員会がある。現在はうまくいっているようにあるがどの地域の課題にもなっているように、ある特定の人、たとえば自治会会長や民生委員などが様々な団体の委員を兼務していることが多く、それは同時に高齢化を進めている。若い世代のなり手も少なく、なかなか引き継ぎできないでいる。

平成29年は、民生委員制度創設100周年のいうことで、宮崎県ではパレードやテレビ番組の特集を組み、民生委員の地域での活動の様子が放送された。民生委員の見守り活動をまとめたもので、大学生が取材し、体験するものであった。初め民生委員の存在さえ知らない学生もいたが、見守り活動の体験ではその必要性について理解し、自分たちにできることはないか考えを述べていた。

私が活動する中である民生委員の方に何が大変かを尋ねたところ、地域での活動は苦と思わないが、「市からの行事や講演会などの参加要請」ということであった。自治会長の大変なのは会議への参加もあるが、市広報や地域の組織・団体のチラシの配布で、読んでいる住民がどの程度いるのかも疑問ということであった。災害時要配慮者支援のリスト作成はどの地域でも大変な作業になるが、ある地区の民生委員の方は「市の職員が地域の組織・団体を集めた会議」を開いてくれて大変助かったという。リストを早く作りたいと思っていたが、民生委員だけでは地域全体を動かすことが難しかったのだろう。

初めにも書いたように地域政策について専門的なことはわからないが、地域で活躍する住民への支援はどのような形で行われているのだろう。民生委員であれば地域包括支援センターがその役割を担ってくれるのだろうか。いやいや地域で活躍する住民への支援はなく、それぞれが共に助け合っていくことが大切ということだろうか。民生委員の方は自分一人ではできないことを抱え、自治会長は行政の末端機関としての役割もあって災害対策などどうしたらよいのか悩んでいる人もいる。

地域は信頼関係によって成り立つ。少数であっても積極的な地域住民がいることを考えると、そういった地域で活躍する住民への支援が必要だろう。その支援は、何も予算を伴うものではない。小さなことではあるが市広報やチラシなどの配布方法、行事や講演会など参加要請など負担を減らすための少しの工夫をすればいいだろう。若い世代のなり手となりうる大学生でも現状を知ると何かできることはないかと考えはじめる。

大きな政策ではないが、地域が元気になるために必要なことだと思う。

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