人口減少や経済格差の拡大が進むなかで、地域社会における焦点は「何をつくるか」から「どのように関わるか」へと移りつつある。社会の土台を支えてきた制度や共同体が揺らぐ今、地域を再生する力は、必ずしも行政の設計図だけにあるのではなく、人と人とのあいだに生まれる信頼と共感の網の目とそれを土台とした新たな価値や意味の醸成にあると思われる。
そもそも地域に生きる一人ひとりのつながりが細くなれば、どれほど立派な政策も持続性を失う。逆に、緩やかで多様な関係が息づく地域には、新たな知恵や挑戦が生まれる。こうした媒介こそが「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」であり、こうした考え方はたんなる学術的な概念を超えて、現代社会における地域のあり方を再考するレンズであるともいえる。
信頼や互酬性に基づく関係性の(再)構築は、行政、企業、NPO、住民を越えて、課題解決の枠組みを更新するとも言われ、補助金や制度設計よりも、こうした“関係のデザイン”こそが地域のレジリエンスを支える基盤であるとも考えられる。実際、災害後の復興や地域ビジネスの創出など、多くの成功例の背後には、たんなる顔の見える関係を超えた共通の物語を共有する関係資本の循環が存在していると考えられる。
政策とは本来、人の営みを制度の枠の中でどうつなぎ直すかを探る試みであるとも考えられる。データや施策の効果測定も重要だが、その数値の背後にある人々の思いと関係性をどう読み解くかが問われている。地域政策の未来は、「信頼」に特徴づけられる人々の関係性という社会の見えないインフラをどう築くかにかかっており、制度と人、構造と関係、この両者を内包した視点に立ち得るか、その統合的なまなざしこそが、これからの地域づくりの出発点であると考えられる。