新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、会議やイベントをオンラインで開催する機会が増えた。ウェビナーという新語が登場し、講座やワークショップのオンライン開催もよく見かける。今後しばらくのあいだ、人々が対面で集まることが難しい状況が続くと考えたとき、地域政策の話し合いの場にオンラインをどこまで活用できるだろうか。
私は、実践型教育プランナーとして学生と地域に出向くことが多い。例年は年に数回の合宿を組んで、住民の方とワークショップを開いたりイベントを実施してきた。しかし今年度はオンラインに切り替わり、さまざまな対応を迫られることになった。初めてのことに大学も地域側も手探りだったが、新しいチャレンジを試みるなかで、効果を見いだせたことがいくつかある。
今年の夏から冬にかけて、総務省「関係人口創出・拡大事業」モデル事業に採択された兵庫県洲本市で、オンラインによる連続4回の講座運営を手伝う機会を得た。講演会やブレイクアウトルーム(Zoomの機能)を使ったワークショップを重ねるなかで、通常の対面型とは異なる点に気づいた。1つめは広報手段、2つめは参加者の居住地と属性、3つめはテーマ設定の違いである。
広報は、チラシ郵送ではなくFacebookやメールを中心とするデジタルに変えてみた。その結果、講師名や企画のキーワードに反応した人が集まり、主催者とこれまで接点のなかった新しい方の参加を得ることができた。移動コストを省けるため、遠距離参加のハードルが低いのも特徴である。洲本のことを全く知らない高校生から社会人まで幅広い層と出会える。海外からの参加もあった。ワークショップで設定するテーマは、自由度が少し高くなるようだ。対面型の場合は、主催者がいるその土地に絞られることが多いが、オンラインの場合は国内、世界から集うため、共通する話題、例えば「食と地域活性化」「体験型観光」をテーマにアイデアを出し合い経験を共有することが可能になる。
このようなオンラインの特性を地域政策の話し合いに生かせば、関係人口の増加を期待できる。魅力的な企画次第では、地域の活性化策を一緒に考える応援団を増やせるのではないだろうか。ただし、地元の方が不在のまま、外の人だけで盛り上がるのは避けたいところだ。対面とオンライン、それぞれの良さを私たちは学んだ。地域政策の意思決定過程にどのように生かせるか注目したい。