私事であるが、所属していた学部が改組され、新たに地域政策学部が設置された。にわかに学生たちに学部のことを説明する機会が増え、いまさらながら地域政策を対象とする教育と研究について考えている。「地域政策について一言」ならぬ「地域政策についてひとり言」のごとき駄文をお許しいただきたい。
これまで当学会を牽引してこられた諸先生方が積み重ねてこられたに違いない議論を、いま、自分がほとんど理解していないことを再認識し、恥じ入るばかりであるが、当学会の設立趣旨を確認すると、「地域政策学」という言い方はしていないことにあらためて気づく。実務家と研究者がともに参加する学術的コミュニティであることが特徴といわれてきたので、実務と研究との統合に力点が置かれているのだろうと推察しているが、地域政策研究の高度化と体系化をめざすこともまた宣言されている。その到達点を確認する作業は容易ではないので、機関誌『日本地域政策研究』に掲載された論文の傾向だけでも整理しておきたいと、長らく念願しながら、手つかずとなっていたその作業に着手してみた。
手始めにというわけで、『日本地域政策研究』の最近の4号に掲載された20点の論説と研究ノートについて検討してみた。そこで取り上げられている研究テーマは、たしかに自治体の施策に関するものが多い。そして、その内容は、産業、医療、防災などさまざまである。一方で、企業や住民によるまちづくりもまた研究の対象となっており、地域政策研究が公共政策に限られているわけではないことがあらためて確認できる。
また、地域そのものが研究対象であるわけではないので、地域スケールという表現が適切かどうかはわからないが、分析の対象とする事象がどの範囲にあるかという観点でみると、ひとつの施設から、コミュニティ、市町村、地方、そして日本全体までさまざまである。地域政策研究の地域スケールもまた多様ということであろう。なお、検討した20点の中には海外の地域を取り上げたものもあり、海外研究も含まれることが再認識される。
研究の方法や志向性をみると、20点の半数以上が事例研究であった。事例研究が地域政策研究のひとつの有力な方法となっていることは確かであろう。そして、インタビュー調査やアンケート調査が少なからず採用され、政策の実態分析、効果検証、課題抽出などが志向されているように思われる。もちろん、プロセスに関心を寄せたりモデルの構築を試みたりするものもある。そのような中で、地域政策研究は具体的な政策提言に踏み込むべきかどうか、それは筆者のひとつの問題関心でもあったが、検討した20点に限っていえば、踏み込んだ論文は少数派であった。
このたびのささやかな試みでは、多様性を言うばかりで、明確な結論を導き出すことはできなかった。しかしながら、この試みは継続していきたいと思っている。地域政策研究はどこをめざすのかは問い続けたいものである。