地域貢献のあり方を考える

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大仲 克俊 (岡山大学)

岡山大学に赴任して本年で4年目となる。教育・研究を行う中で、地元自治体、企業から相談を受けることがある。その中で感じるのは、地方自治体や企業において、政策の方針や実施において、小規模自治体や地元企業の決断の早さである。

無論、手放しで小規模自治体や企業における決断の早さを評価するのではない。時に、トップの拙速な決断は、大きな問題を発生させてしまう。私が驚き、感心するのは-特に小規模自治体であるが-、現場担当の職員と首長等の組織のトップが地域の問題点や課題意識を共有し、そこから新たな政策に必要性を考えている点である。小規模だから良いわけではないと思うが、合併をせず、小規模自治体だからこその課題の把握やできることがあるのではと、岡山において強く感じている。当然、これらの自治体の関係者や企業の方が大学に相談に来られた際は、具体的な課題の提示や自治体・企業でやりたいことを示されることが多い。地域政策の研究者として対応することに大きな意義を感じている。

一方で、これらの地域の要望に応えていく中で時に違和感を抱くことがある。それは、地方自治体では新たな政策や長期計画の策定において、議会や国の事業の利用に対して政策の根拠を示すために様々な外部の知見や調査結果を時に必要とするのであるが、この外部の知見や調査結果に自治体が振り回される、又は無理やり入れることが求められているのではないかという点である。さらに言えば、この外部からの知見や調査結果に基づく提案が、本当に地域で必要とするものであったのかという点も考えなければならない。

実際、相談に来られた自治体では、以前に大手シンクタンク・コンサルタントに地域計画の調査・立案を依頼し、その成果への評価は低かった。また、他の自治体では、県外、さらに言えば全国区で活動している機関に依頼していくことが、本当に自分達にとって良いことか悩んでいることもあった。さらに言えば、自分達の地域の状況を踏まえて、相談できる機関を求めている実態もある。

日本地域政策学会では、大学教員を中心とする研究者だけではなく、地方自治体・NPO・シンクタンク等、多様な会員で構成されている。地方自治体や企業において、様々な外部からの知見・調査を用いて政策・活動を行うのが当たり前となる中で、日本地域政策学会の-会員により研究スタイルは異なるものの-、現場に根ざした研究活動や政策提言の取組はこれら自治体や企業に貢献できるのではないか。地域政策や地域活性化の取組において、地方自治体や地方企業は大きな存在である。自治体や企業も取組をより有意義にするために外部の知見を求めていることが多い。これらの主体が地域政策や地域活性化について相談又は議論-必要に応じて会員の紹介-ができる場として、日本地域政策学会の役割があるのではないかと考える。

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