2023年7月の総会で、国際交流委員会の設置が正式に承認された。日本地域政策学会に国際交流委員会の設置と聞くと、違和感を持たれる方もいらっしゃるかもしれない。たしかに「地域」(region)は、行政学的な観点からは、国内の「広域行政」を意味することが普通だし、会員の中に国際化の需要は必ずしも多くはないようにも感じられる。しかし、「地域」は伸縮自在の概念であり、グローバル時代には、アジア地域、ヨーロッパ地域のような形で、主権国家を超える単位にもなり得るものだ。
実は、当学会は2005年、2006年に東アジア国際シンポジウムを日中で開催している。国際シンポジウムはその後立ち消えとなってしまっていたが、この間、グローバル化の進展が一層進み、我々は気候変動のような地球規模の課題が重層的に積みあがるような状況に置かれている。しかも、ロシアによるウクライナ侵攻のように、権威主義国家VS民主主義国家、先進国VS途上国等の対立先鋭化により、国際平和が著しく脅かされている。
こうした状況下で、佐々木茂学会長から、国際交流委員会を設置し、英語での報告が日常化するようにならないかとの諮問を受け、第11期役員から国際交流準備委員会が設置された。私などは、国際化といえば、日本から海外への「アウトバンド」ばかり考えがちだが、日本にいる留学生や海外からの研究者が発表する「インバウンド」の機会を設けることも内なる国際化の重要な課題であることにようやく気が付いた。どの程度の需要があるのかはわからなかったが、2023年1月の関東支部大会から、英語による報告を試行することとした。
2023年7月の東京大会からは、大会参加申し込みフォームが英語対応となり、会員は英語での個別報告をいつでも申し込めることとなった。さらに、東京大会では、「観光・国際」セッションが英語で実施された。この間、精力的にご尽力いただいた国際交流委員会の先生方をはじめ、セッション共同司会を担当された黒川基裕先生、安田慎先生には特段の感謝を申し上げたい。
さらに2024年1月の関東支部大会でも、英語による2件の報告が実現し、フロアとも活発な議論が展開された。ここに至って、当学会の国際化もついに定着した感がある。国際交流委員会としては、2024年7月の京都大会に向けて、国際交流委員会セッションを企画・検討する予定である。国際化の進展は、もはや後戻りはできないフェーズに突入している。国際交流委員長として、当学会の国際化がさらに進化していくことを強く期待している。