「研究成果を教育に還元する」は、大学教員に課せられた使命の一つである。日本地域政策学会を通じた研究活動をいかに教育に還元するのかという視点に基づき、今回は、筆者が大学で担当している科目について述べてみたいと思う。
さて本学会には、大学等に所属する教育研究者のみならず、多くの実務者会員が所属している。実務者会員のなかには、大学所属会員が普段どのような科目をどのように教えているか、興味を持っている方もおられるのではないだろうか。
筆者自身も大学に所属しているが、会員諸先生が何をどのように教えておられる方か、ほとんど知らない。そこでこの場を借り、地域共創学部地域づくり学科で、普段何をどのように教えているかについて簡単にご紹介したうえで、研究からの還元について述べてみたいと思う。どなたかの好奇心にマッチできれば幸いである。
地域共創学部地域づくり学科は、地方創生を担う人材育成を目指し、地域政策・行政コースと地域プロデュースコースを設け、それぞれの出口像として地方公務員と地域プロデューサーを掲げている。筆者は、地域プロデュースコースの教員である。
今年度の担当科目は次の通りである。1年前期「地域共創学概論(1コマのみ)」、1年後期「地域プロデュース入門(全員履修必修)」「地域社会調査入門演習」「マーケティング入門」「九州地域学(1コマのみ)」、2年前期「地域資源論」「地域社会調査の設計」、2年後期「地域社会データの分析」、3年通年「地域社会調査実習」「ゼミナールⅡ」、4年通年「卒論ゼミナール」。同僚の多くは1、2年からゼミを持ち、講義科目はさほど多くないのだが、私の場合「社会調査士」資格科目を担当することもあり、結構な講義数となっている。
このなかで、日本地域政策学会を通じた知見が大きく貢献していると言えるのが「地域資源論」だ。この科目は「地元の地域資源を知り分類し、未活用の資源に着眼し、マーケティング手法で編集し、新たな価値を創造し、価値を享受したい人たちに確実に届ける」ことができるようになることを目指し、地域マーケティングの視点から構成されている。その内容は、毎年アップデートできている。学会活動を通じて、新たな事例や手法がどんどんインプットされてくるからである。現在進行形の事例や取組を紹介することで、「夏休みに訪れて自分の目で確かめてきます!」という反応も出てくる。「自分の目で確かめる」ことの重要性を説いているので大変嬉しい。教科書に掲載されている過去の成功体験だけでは、将来に向けた実践的学びにはならないので、学会員の研究報告は教育に欠かせないものになっている。
別の科目についても書こうと思っていたが、紙幅が足りなくなってしまった。話の続きは、コロナ明けのリアル学会にとっておきたいと思う。