気候市民会議(Climate Assembly)は、一般市民から無作為に選出された人たちが、専門家から科学的知見を得て、数週間から数か月かけて気候変動対策について議論し、行動のための提案を作成・提言するというものです。2019年ごろから、フランスやイギリスなど欧州諸国で、国レベルだけでなく地方自治体レベルでも活発に取り入れられてきました。たとえば、英国ではこれまでに20を超える地方自治体で実施されています。
日本国内で初めて開催されたのは「気候市民会議さっぽろ」(2020) です。コロナ禍で、すべてオンラインで実施されました。これに続き、「脱炭素かわさき市民会議」(2021) 、「武蔵野市気候市民会議」(2022)等、20以上の自治体で、大学や関連団体とも連携しながら取り組まれています。
筆者の勤務先である龍谷大学では、2021年度に大学発・初の「龍谷大学学生気候会議」を開催しました。龍谷大学学生気候会議は、①気候会議を通した人材育成(気候市民会議同様無作為抽出を活用)、②学生が科学的知見を得ながら議論を通して大学に提言(気候市民会議と同じ役割)、③学生が大学の脱炭素政策・施策策定に参加(大学の気候ガバナンスの構築)といった3つの目的で始められました。例年、11月から12月で、土曜日終日(2日)で開催しています。教員を含む専門家からの講義や自治体や大学の取り組みの紹介も取り入れながら、多様な学部・学年の学生たちがチームを形成し、楽しく・熱く議論が繰り広げられます。2日目の最後にはグループで提案を発表してもらい、個人からもアンケート形式で意見を集約します。
第1回目は、異なる領域を専門とする教員3名(地域ガバナンス論、持続可能性研究、コミュニケーション・デザイン)で、準備・運営を担っていましたが、1回目の学生気候会議のメンバーたちが、学生団体を立ち上げ、2回目以降は、教員と学生の共同運営で実施しています。毎年、準備も運営も大変ではあるのですが、2日間の会議を通して学生が成長していく様子を目の当たりにし、参加した学生たちから「気候変動が自分事になった」「もっと地域と関わっていきたい」「自分たちも大学に提言できることが嬉しい」「議論の重要性や楽しさを知った」等の嬉しい言葉をかけてもらうと、開催してよかった、来年も頑張ろうという気持ちになります。
毎年開催し学生たちから大学(学長)に提言書を提出していると変化も起こってきました。今年度は、学内で新しく開設された「サステナビリティ推進室」の事務スタッフの方々にもサポートいただき、運営側の教員数も増えて準備を進めています。学生気候会議の取り組みも気候市民会議同様、全国に広がっていけばと思います。
龍谷大学学生気候会議について
第1回 https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-9545.html
第2回 龍谷大学学生気候会議が開催されました【LORC】 | 地域公共人材・政策開発リサーチセンター
第3回 龍谷大学学生気候会議(第3回)が開催されました【LORC】 | 地域公共人材・政策開発リサーチセンター