教員志願者数の減少と勤務地域の変化

2023年8月1日

岡部 智 (本宮市民生児童委員(元小学校長))

 教員志望者の減少は、日本各地で進み、学校現場では「不足する教員確保」を、教育委員会の人事担当者へ願い出ても、直ぐに補充できる教員はいないと回答される。補充教員の申請手続きには、長い時間がかかり、その間の補充教員の職務を補うのは、学校においては、「教頭・教務・分科担当者」などが、充てられることが多い。  児童生徒数が多い学校では、補充教員が配置されるまでの間、前述したように校内にて校務分掌を割り振るが、へき地地区にある学校では正式な教員配置までの期間は、より困難である。実際、私はへき地勤務の時、「教頭」以外は補充教員の補欠はできなかった。 教員志望者減少理由の多くは、勤務時間の超過、部活動指導、校務分掌の負担、評価表の作成、学級担任、保護者との面談など、どの学校においても当てはまり、将来「教員を志望する」という選択肢が少なくなっている。 以上を踏まえて「地域政策の視点」から、へき地での教育と学校運営について述べる。 前述した「教員志望者数の減少」は、勤務地の「違い」が原因であるとは言えないだろう。教員の勤務地は、市町村や都道府県の教育委員会が管轄し、採用条件や勤務年数、専門性や特化した職務内容、本人の人事異動計画等を総合し、自治体の教育委員会人事部にて決められる。配置された勤務地は、数種類の地域に分けられ、F県において教員は、必ず「へき地勤務」を命じられていた。(なお、へき地勤務と同等の場合、必ずしも該当しない)学校規模は、全校児童数数名や複式学級の学校が多い。さらに、学校のある地域は、人里離れた山間地が多く、住宅は点在している。また、学校の往復移動手段が「スクールバス」の場合が多く、住民の生活における移動手段が限られてくる。 ここで、「へき地教育の今日的課題--教員の勤務条件に注目して掲載誌 愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (12) 2009.2 p.315~321植村 広美, 山崎 香織, 小阪 成洋 他」によると、へき地に所在する学校における授業実践や学校運営のあり方を主要な研究対象としてきた。しかし、へき地に勤務する教員の勤務条件や待遇に焦点を当てた研究は意外にも少ない。この指摘の通り、へき地で勤務する教員の生活までにも影響し、教員志望者数の減少へ繋がる。しかし、「へき地勤務」という条件だけではない。教員志望段階において、「へき地勤務」を知らなかったために、現実を知って勤務や移動に戸惑ってしまう。教員負担の一つが増加し、新たな学校の理解、地域における生活、住民との関わり、校務分掌、部活動指導がより一層大きな負担となる。周囲の誰にも相談ができない。単身暮らしや長距離移動により学校における校務処理の持ち帰りが起きるなど、悪循環が生じてしまう。 テーマに戻るが、今後「教員志願者数の減少と勤務地域の変化」は、今以上に少子高齢化が進むと、「へき地」に限らず、どの地域においても生じる問題である。

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