私の地域への想いーローカルとグローバルから際(きわ)を無くすこと

2023年1月10日

佐々木 茂 (東洋大学)

 私が企業を取り巻く社会の多様性の存在に初めて触れ、その解明には学際的なアプローチが必要であることを知ったのは、大学2年次の頃であった。それから20年後、米国へ留学の機会を得た。相前後して、当時所属していた大学に地域政策学部が新設された。私の研究も、流通システム研究の中で課題となった「地域の生活を社会はどのようにして支えることができるのか」という社会志向性に軸足を置いた問題意識へと転換し始めていた。そのためもあって、米国留学では社会起業家に注目し、もっぱら地域の課題に取り組むNPOを考察の対象とした。

 地域政策学は、マーケティングで取り上げる企業と比べると学際性が格段に広くなるため、より一層の複雑さを包含している。また、地域という表現で境を設けてしまうと、あたかも狭く限られた空間の議論をしているように考えられがちだが、実際には、グローバルな環境下の地域というのが正しい視座であろう。

 このグローバルな視座で地域を見ると、マーケットを海外に求める、海外から留学、就職、投資、外国人研修生・技能実習生といった形での入国、さらには、事業買収やリゾート開発なども進みつつある。

 ところで、私はかつてニュージーランド(NZ)を頻繁に訪問した時期があったが、よく聞く言葉にOE(Overseas Experience)がある。これは、国民の海外での職務経験や休暇を奨励するものである。隣国までジェット機でおよそ3時間という隔絶感ゆえに、海外で得た知識や経験、さらには、人的ネットワークを活かしてNZの市場を拡大し、国の成長に貢献してもらおうという考え方である。NZはこうしたグローバル人材のおかげで、生産性の高い市場経済の形成に成功している。国内各地域を見ても、地域資源を活かすべく、グローバルとローカルをうまく融合する国である。

 とかく同質的な競争に陥りがちな我が国の地域ではあるが、否応なく異質な視点を必要とするグローバル化の流れは進むばかりである。NZ同様の島国で地下資源にも恵まれていない国として、分断ではなく、多様な視点を取り入れた「際(きわ)」を超えるアプローチの創造が地域政策の課題と言えるのではないだろうか。

 地域の企業や自治体の中にもグローバル人材が増え始めている。彼らも含めて多様な地域の人々とのより一層のつながりを求める場として日本地域政策学会の強みを活用したい。

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