2015年度の全国大会のシンポジウムでは、人口減少問題に対する全国各地の対応が話題に上った。少子高齢化へと転じていく中で、多くの自治体が縮小傾向に入り、内発的な取り組みだけでは、地域再生が難しいのも事実である。
一方、交流人口の増加を目指し、政府主導でインバウンド観光が始まってから10年以上が経過する。外国人観光客の訪問先は、東京から関西方面へのゴールデン・ルートから、最近では、全国各地へと分散化し始めた。その結果、彼らは、日本のより日常的なライフスタイルや地域文化に触れる機会が増えている。
こうした中、全国の自治体が、こぞってアジアをはじめとして海外への進出に取り組んでいる。観光を通じて地域の魅力を認知してもらい、農産物の輸出の進行につなげたり、進出先の国でのイベントを通じて中小企業のPRの場を設けるなど、国際戦略を展開しているのである。海外という異質な市場を知ることがイノベーションにつながることから、地域の国際化は、中小企業にとっても絶好の成長機会となる。
最近、群馬県では、外資系企業の誘致のためのツアーも始まった。外資系企業の進出は、地域での雇用増加や日本からの輸出拡大にも寄与している。既往の外資系企業の事業を見ると、地域の産品の世界への発信、インバウンド誘客、地域の魅力向上、日本企業へのノウハウ提供、研究開発拠点の設立など効用は多岐に渡っていることが分かる(JETRO,「地域経済に貢献する外資系企業」,対日投資部資料,2015)。
地域の国際戦略における課題は、国際競争に通用するブランド作りとそのブランド展開に向けたマーケティング戦略を構築することである。進出先のパートナーの選定は、現地市場を把握し、市場適応か日本式の導入(世界共通戦略)かを見極め、チャネル構築に直結していくことから、極めて重要な意思決定となる。その上で、世界全体で一貫性のあるブランド信念を確立するとともに、進出先の市場の価値観への適応も図る必要がある。こうした進出先での展開を促進するためには、地域にとって身近な存在である自治体が、日本と現地の多様な機関との連携の中から進出に向けた環境を醸成することが求められている。
人材育成の課題もある。海外に進出する日本企業が求める資質を有する人材を確保することは、アジアのみならず、北米においても言葉の壁以上の難しさがある。リーダーシップを発揮できる人材を育成するとなると、なおさら中小企業には荷が重い。こうした人材育成には、今後、我が国の大学の役割も増大していくものと考えられる。
2016年2月1日